不登校からホームスクールへ|"通える場所"を探すのは、もうやめていい
不登校からのホームスクールとは、学校に通うかわりに、家庭を拠点にして学ぶことです。行き先を「別の施設」ではなく「家」に置き直す、という選び方のことです。
うちに相談に来られるお母さんは、たいてい、もう何かしら試したあとです。
別室登校、フリースクール、適応指導教室、通信教材。ぜんぶ見て、ぜんぶ少しずつ違って、それで疲れている。
この記事は、そこから先の話です。
「合う場所」が見つからないのは、探し方が下手だからじゃない
僕は1対1の指導を5,000時間ほどやってきました。いまは小学生向けに、学校に行かない子のオンライン教室もやっています。
そこで何度も見てきたのが、こういう順番です。
まず学校の別室に行ってみる。先生が時間を割いてくれているのはわかる。ただ、勉強の中身までは用意しきれない。
次にフリースクールを見学する。楽しそうではあるけれど、遠い、高い、そして言葉にしづらい違和感が残る。
塾にも相談する。でも多くの塾は、学校に通っている前提で時間割が組まれています。通信教材は、一人では続かない。
ここまで来ると、「うちの子に合う場所は、どこにもないのかもしれない」と思えてきます。
でも、僕の実感は少し違うんですよね。
合う場所が無いんじゃなくて、「通う先を探す」という前提のほうが、その子に合っていないんだと思います。
この状態で検索すると、出てくる見出しはだいたい「別のフリースクールを探す」「体験入学をしてみる」の方向を向いています。悪い助言ではありません。ただ、探す場所を変えているだけで、探すこと自体はやめていない。
やめていい、というのがこの記事の立場です。
移行の前に、ひとつだけ決めること
ゴールを、いったん「今日の30分」に置き直す
手順より先に、これです。
遠いゴールだけを置いていると、家でやることが全部「そこへ戻るための準備」になります。子どもは家にいても、ずっと学校のことを考えることになる。
制度の側も、実はもうそこまで狭くありません。
2016年に成立した義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)は、学校以外の場での多様な学習活動の重要性をふまえて、その支援や情報提供を国と自治体の務めとして定めています。
文部科学省も、2019年10月25日の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」で、支援の目標は学校復帰そのものではなく、子どもが自分の進路を主体的にとらえて社会的に自立することだ、と整理しました。
学校教育法第17条が保護者に求めているのも、子どもを学校に就学させる義務までです(詳しくは「日本でホームスクールは違法?」に書きました)。
ただし、家庭での学習が就学義務を果たしたことになる、とまで言っている法律は、いまのところありません。学校の側にも、出席の状況を把握して教育委員会に報告する定めがあります。
つまり「連絡しなくていい」ではなく、籍は学校に置いたまま、①のように伝えておくほうが、あとが楽になるということです。
ホームスクールへの移行、5つの手順
① 在籍校に「家で学ぶ」と伝える
やめる連絡ではありません。籍は置いたまま、しばらく家を拠点にするという共有です。
言い方はシンプルでいいと思います。「本人と話して、しばらく家で学習を進めることにしました。様子はこちらから定期的にお伝えします」くらい。
担任の先生と細い線がつながっていると、あとの手続き(出席扱いなど)が楽になります。
② 1日の"軸"を、1つだけ決める
時間割を作らないでください。だいたい3日で崩れます。
決めるのは軸を1つだけ。「午前中に、机で30分」。それだけです。
続かない原因は、たいてい意志ではなく設計のほうにあります。最初から詰め込むと、崩れたときに、やっぱりダメだった、という感触だけが残ります。
③ つまずいている学年まで、戻る
ここは、いちばん抵抗のあるところだと思います。
小学6年生の子が、分数でつまずいている。そこを飛ばさずに、4年生の内容から始められるかどうか。
戻るのは、遅れている印ではありません。土台のあるところから積み直すほうが、結局いちばん速いからです。わからないところを飛ばして進めても、その子の中に何も残らないので。
お母さんたちが本当に望んでいるのは、たいてい大きな成果ではありません。分数と小数点、それに文章をきちんと読めること。まずそこでいいと思います。
④ 出席扱いの制度を、知っておく
文部科学省の通知にもとづき、自宅でICT等を活用して学習した分を、校長の判断で指導要録上の出席扱いにできるしくみがあります。
要件はいくつかあり、保護者と学校の協力関係、定期的な対面指導、計画的な学習プログラム、学校が状況を把握していること、などが挙げられています。
ひとつだけ、先に知っておいてほしい条件があります。要件には「学校外の公的機関や民間施設等で相談・指導を受けられない場合に行う学習活動であること」という項目が入っています。フリースクールや適応指導教室に通えているご家庭は、この制度の対象にならないことがあります。
使う・使わないは後で決めていいです。ただ、①で先生とつながっているうちに、うちの場合はどうか、一度聞いてみてください。
⑤ 同じ立場の子と、つながる場所を1つ持つ
家を拠点にすると、勉強のほうは意外と回ります。回らなくなるのは、人とのつながりのほうです。
小中学生の不登校は、文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和6年度)で35万3千人を超えました。珍しいことではないのに、家の中にいると、その子は「自分だけ」だと思っています。
週に1回でいい。同じ立場の子が画面の向こうにいる時間を、1つ作っておいてください。
やってみて、いちばんつまずくところ
5つのうち、崩れるのはたいてい②です。
最初の1週間はうまくいきます。2週目に1日抜ける。3週目に、なんとなく戻らなくなる。
ここで「うちには向いていなかった」と結論が出てしまいがちです。
でも、抜けたのは軸が重すぎたからで、その子のせいではないんですよね。机が無理なら、隣に座って本を読むだけの日があってもいい。
家を拠点にするというのは、量を減らしていい、という意味ではありません。その子の実際のペースに、こちらが合わせられるという意味です。
30分が15分になって、また30分に戻る。分数まで戻って、そこから積み直す。そういう調整が、家だとその日のうちにできます。
僕たちが「家が、本物の学び場になる。」と言っているのは、そういう意味です。特別な教材や特別な先生の話ではなくて、その子に合わせて何度でも設計し直せる場所が家だから、そう呼んでいます。
よくある質問
Q1. 不登校とホームスクールは、何が違うんですか?
同じ「学校に行っていない」でも、置いているものが違います。
不登校は、学校に行っていないという状態を指す言葉です。ホームスクールは、家を学びの拠点にすると決めた選び方のことです。
だから、不登校からホームスクールに移るというのは、状況は変わらないまま、こちらの決め方だけが変わる、ということになります。
Q2. 親が勉強を教えられなくても、できますか?
できます。むしろ、親が先生役を全部やろうとして続かなくなるほうが多いです。
お母さんの仕事は、教えることではなく、続く形を守ることだと思っています。教える部分は、外に出していいところです。
Q3. 中学に上がるとき、不利になりませんか?
進学そのものは、籍を置いていれば通常どおり進みます。心配されているのは学力のほうだと思います。
ここは正直に言うと、やった分だけ進みます。学校に行っていても、そこは同じです。
だから③(戻ること)を手順に入れています。中学に上がるまでに「ひとつ続けた」という経験がある子は、そのあとが違います。
学校に行かない小学生に、勉強のある居場所を
⑤に書いた「同じ立場の子とつながる場所」が、探してもなかなか見つからない。だから僕たちで作りました。
学校に行かない小学生の、勉強がある居場所
——その子らしい花が、咲くまで。
国語と算数を、オンラインで、同じ立場の子たちと一緒に。(おそらく後から社会を足すと思います。)
行かない日も、学びは止まらない。
ご家庭の状況をうかがったうえで、合う形をお伝えします。まずは一度ご相談ください。
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この記事を書いた人
鈴木 裕人(Arist代表)
福岡の家庭教師・ホームスクール「Arist」代表。1対1指導5,000時間。学校に行かない小学生の、勉強がある居場所「コノハナ」主宰。プロフィールはこちら



