ホームスクールのメリット・デメリット|1対1指導5,000時間の現場から
ホームスクールとは、学校に通うかわりに、家庭を拠点にして学ぶことです。
この記事では、そのメリットとデメリットを並べます。いいことばかりは書きません。
僕の仕事は、ご家庭に「うちはやめておこう」と決めてもらうことでもあるからです。
言葉の意味や日本での位置づけから知りたい方は、先に「ホームスクールとは?定義・歴史・日本の現状」を読んでもらうと、この先が読みやすくなりますね。
メリット1 その子の速さで進める
いちばん大きいのは、これです。
学校の授業は、クラス全体の速さで進みます。分かっている子は待たされて、分からなくなった子は置いていかれる。
どちらにも、もったいない時間が生まれます。
家庭が拠点なら、その子の速さで進められます。得意な単元は3日で終わらせて、つまずいた単元は2週間かけていい。
僕は1対1の指導を5,000時間やってきましたが、伸びる子に共通しているのは、頭の良さよりも「分からなくなった地点まで戻れたかどうか」でした。
急がば回れで戻ったほうが、結局は速いんです。
学校では、その戻る時間がなかなか取れません。
メリット2 しんどい朝を、休める
朝、体が動かない日があります。
学校に通っていると、その日は「欠席」になります。休んだぶんだけ遅れて、遅れたぶんだけ行きにくくなる。
この輪がいちばんしんどいところです。
家庭が拠点なら、朝がしんどい日は昼から始めればいい。休んだことが、そのまま遅れにはなりません。
文部科学省も、2016年にできた「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)で、学校以外の場での学びと、休養の必要性を認めています。
無理をして通わせないという選び方は、もう例外ではなくなってきました。
メリット3 「好き」に、時間を全部つかえる
学校の1日は、時間割で区切られています。
45分で好きなことを取り上げられるのは、大人が考えているよりずっと大きな損です。乗ってきたところで終わるので、深いところまで行けません。
家庭なら、朝から夕方まで恐竜を調べていてもいい。そこで身につく調べ方や集中の仕方は、あとから教科の勉強に効いてきます。
僕自身、高校のときの偏差値は34でした。そこから65まで上げられたのは、勉強量を増やしたからではなくて、自分に合ったやり方を見つけたからです。
やり方を探す時間が持てるのは、ホームスクールの強みだと思っています。
デメリット1 社会性は、放っておくと減る
ここからが正直な話です。
いちばん多い心配は「社会性が育たないのでは」というものですが、これは半分だけ当たっています。
家にいること自体が社会性を奪うわけではありません。ただ、同年代と関わる機会は、意識してつくらないと自然にはゼロになります。
学校は、放っておいても人が集まる場所でした。家は、そうではありません。
だから、始めるときに「週に何回、誰と会うか」を先に決めてしまうことをおすすめしています。
習い事でも、オンラインの教室でも、地域の活動でもいい。中身より、予定として先に置いてあることのほうが大事です。
あとから足そうとすると、たいてい足せないまま半年が過ぎます。
デメリット2 教える人は、結局おうちの人になる
これが、いちばん軽く見られているデメリットです。
日本にはホームスクールという制度がないので、カリキュラムも教材も、誰かが決めてくれるわけではありません。何をどこまでやるかを決めるのは、おうちの人になります。
お母さんが働いていれば、その負担はそのまま生活に乗ります。
「家庭学習をさせてください」と塾から言われて疲れてしまった、という話を僕は何度も聞いてきました。ホームスクールは、その負担がさらに大きくなる選び方でもあるんです。
対策は2つだけです。教える人を家の外にも1人つくることと、やることを3つに絞ること。
国語と算数と、あとは本人が好きなもの。全教科をそろえようとした家庭から順に、止まっていきます。
デメリット3 進路の情報が、入ってこない
学校に行っていると、進路の情報は放っておいても入ってきます。プリントが配られて、三者面談があって、まわりの子の話が耳に入る。
家庭を拠点にすると、この流れが全部止まります。
「気づいたら出願の時期が終わっていた」というのが、いちばん取り返しのつかない失敗です。学力の遅れは戻せますが、締切は戻せません。
ですので、在籍校とのつながりだけは切らないでください。ホームスクールを選んでも、お子さんは学校に在籍したままです(学校教育法第17条)。
担任の先生と学期に1回話しておくだけで、この穴はほとんど塞がります。
法律まわりの詳しいところは「日本でホームスクールは違法?就学義務と教育機会確保法をやさしく解説」にまとめています。
後悔した家庭に、共通していたこと
デメリットを3つ書きましたが、後悔につながるのは、実はこの3つそのものではありませんでした。
共通していたのは、「とりあえず休ませて、そのあとを決めなかった」ことです。
最初の1か月は、休むだけでいいと思います。ただ、そこから先に何も置かないと、ゲームとYouTubeで1日が終わる生活のほうが先に固まってしまう。
あとから勉強を足そうとすると、今度はそれが「取り上げるもの」になります。
文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2025年10月公表)によると、小・中学校で学校に行っていない子どもは353,970人。
小学校が137,704人、中学校が216,266人で、12年続けて増えています。
これだけの家庭が、同じ入口に立っています。
うまくいっている家庭がやっていたことは、そんなに難しいことではありませんでした。休んだ次の週に、1日の形を決める。それだけです。
始め方の順番は「ホームスクール大全|日本での始め方・法律・費用・1日の学習設計」に全部書きました。
よくある質問
Q1. ホームスクールを選ぶと、卒業できないのでしょうか。
いいえ。お子さんは学校に在籍したままなので、小学校・中学校の卒業資格はなくなりません。
出席の扱いは学校ごとに違うので、在籍校に確認してください。
Q2. 勉強は、どれくらい遅れますか。
やり方次第としか言えません。ただ、僕が現場で見てきた限りでは、1日1時間でも決まった時間にやっている家庭は遅れません。
逆に「気が向いたときにやる」にした家庭は、3か月でだいたい1学期分ひらきます。時間の長さより、決まっているかどうかです。
Q3. 親が教えられません。それでもできますか。
できます。おうちの人の役割は、教えることではなく「1日の形を決めること」だからです。
教科を教える人は、外に頼っていいと思います。むしろ、教える役と見守る役を同じ人が兼ねると、家の中の空気が重くなります。
まとめ
メリットは3つ。その子の速さで進める、しんどい朝を休める、好きなことに時間を全部つかえる。
デメリットも3つ。社会性は放っておくと減る、教える人は結局おうちの人になる、進路の情報が入ってこない。
そして、後悔につながるのはデメリットそのものではなく、休んだあとの形を決めなかったことでした。
3つのデメリットは、どれも先に知っていれば手が打てます。
週に何回誰と会うかを決める。やることを3つに絞る。担任の先生と学期に1回話す。
今日できるのは、たぶんこのうちの1つだけです。それで十分だと思います。
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この記事を書いた人
鈴木 裕人(Arist代表)
福岡の家庭教師・ホームスクール「Arist」代表。1対1指導5,000時間。学校に行かない小学生の、勉強がある居場所「コノハナ」主宰。プロフィールはこちら



